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いつもの如く、
博雅は独り晴明の家にやってきた。
紺桔梗の指貫に薄い榛色の直衣。
淡い茶が瞳の色によく合っている。
手に下げた瓶子の中には、
唐渡りの酒。
珍しいものを貰ったので一緒に呑もうというわけだ。
頃は梅雨。
しっとりと細かい雨が漂うように降っている。
庭では乱れ放題に伸びた雑草が、
雨に濡れて生き生きと緑を広げていた。
注意深い目で見れば、
荒れているように見える庭にもそれなりの意図と調和があると知れる。
足元に群れて咲く白い小さな銀杯草を踏まないように、
博雅は注意深く歩を進めた。
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