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「……放っておいてよ」
顔を背けて、
言う。
晴明がその横に膝をつく。
「お前を帰せるといいんだが……あれからいろいろ試してみたんだが、
うまく行かない」
本当に偶然に開いてしまった通路だったのだ。
どこに通じていたものやら、
辿る術もない。
「捕まえるつもりは無かったのに。
すまない」
晴明の肩に紗羽がそっと頭を預ける。
いいんだ、
と力なく薄く微笑んだ。
「あの時ここに落ちなかったら、
敵にやられてたと、
思う」
「……敵?」
紗羽の薄い唇を自嘲的な笑みが掠める。
長い長い戦いに敗れて。
時空の中を飛んで逃げている内に、
いつの間にか仲間ともばらばらになっていた。
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