第4章

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そのまたあくる日。 夕方になっても動かない厚く垂れ込めた雲を、 簀子に出た春花が気遣わしげに見上げる。 紗羽はもうくたりと畳に横たわったままだ。 春花が庭に下りて、 塀際の椿の木に手を触れる。 自分はここから出る事はかなわないが……あるいは。 触れた木の幹を伝い、 その根へと意識を伸ばす。 根の先は……思ったとおり塀の外。 そこから別の植物の根へ意識を飛ばす。 川の中の飛び石を辿るように、 根から根へ。 地面の下を春花の意識が移動していく。 根の先端同士が絡み合っていればよし、 距離があるときは意識を集中する。 飛んだ先の根を掴み損ねたら、 流されてしまって戻れなくなる。
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