3人が本棚に入れています
本棚に追加
そのまたあくる日。
夕方になっても動かない厚く垂れ込めた雲を、
簀子に出た春花が気遣わしげに見上げる。
紗羽はもうくたりと畳に横たわったままだ。
春花が庭に下りて、
塀際の椿の木に手を触れる。
自分はここから出る事はかなわないが……あるいは。
触れた木の幹を伝い、
その根へと意識を伸ばす。
根の先は……思ったとおり塀の外。
そこから別の植物の根へ意識を飛ばす。
川の中の飛び石を辿るように、
根から根へ。
地面の下を春花の意識が移動していく。
根の先端同士が絡み合っていればよし、
距離があるときは意識を集中する。
飛んだ先の根を掴み損ねたら、
流されてしまって戻れなくなる。
最初のコメントを投稿しよう!