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木に触れて立っているその白い額に汗が浮かび、
呼吸が乱れてくる。
そして。
……ひろまさ
名を呼ばれた気がして、
博雅は顔を上げた。
自室に座る、
彼の目の前には和琴の楽譜。
視線を戻そうとして……何やら騒ぐ心に立ち上がった 。
広縁に出て黄昏せまる庭を眺めると。
庭の隅、
重たげに花房を揺らす藤棚の陰に佇むのは??春花の姿。
「春花!」
博雅が庭に駆け下りる。
「どうやってここに?外には出られないはずでは……」
触れようとしたその指に実体の無い事に気づく。
大きな瞳が博雅を見つめる。
……博雅、
来て。
助けて。
声の無い声が、
博雅の頭の中にかそけく響く。
「……春花?」
……いなくなってしまう。
紗羽を……助けて。
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