第4章

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陽が落ちてしまったが、 やはり月の出る気配はない。 御簾越しに空を見上げた晴明が眉を曇らせる。 瞼を閉じて胸に凭れかかる紗羽の白い顔を見やった。 ……このままでは、 もうだめだ。 だからといって人を喰わせるというわけにはいかない。 晴明の顔に逡巡がよぎる。 紗羽の額に落ちる髪をそっとかきあげて閉ざした瞼をじっと見つめた 。 ひとつ吐息をついた晴明が、 白い額に唇を落す。 「……晴明?」 うっそりと瞼を開いて、 紗羽が見上げる。 その紅唇に晴明の唇が合わさる。 抱き寄せたうなじから背中へ、 指が這い下りた。 紗羽の瞳が見開いた。
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