第4章

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「……おひとよし」 呟いて、 紗羽は笛の音に身体を委ねた。 晴明が広縁に出て、 庭で笛を吹く博雅を見つめる。 忘我の境地にはいってしまった博雅は気づく事もなく、 ただ笛を吹き続けていた。 遥か遠い――遠い昔。 こんな風に暖かく満たされていた時が確かにあったと、 紗羽が思い出す。 傍らに居た優しい存在を。 閉じた瞼の下で、 もう朧にしか思い出せないその面影を紗羽が辿った。 「……どうして」 柔らかい音色につつまれて、 紗羽がぽつりと呟く。 どうしてみんな。 どうして、 そんなに優しいの……? 頬を伝うものを見られたくなくて、 紗羽は春花の胸に顔を埋めた。 春花の唇に、 静かな笑みが浮かんでいた。
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