第1話「いやまさかそんなバナナ」

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自称「霊の視える」友人に、霊が視えてしまった時の対処法を聞いた事がある。 友人は3つある、と言った。 1.視えても無視する 2.絶対に話しかけてはいけない 3.触れようなんて論外だ でも、例えば悪霊の類が向こうから関わってきたら? この質問に友人は一言、 「走って逃げろ」 そして今、僕は走って逃げている。 それはもう死ぬ気で走っている。 後ろをチラリと見てみると、血まみれの少女が「キャハハハハハハハハハ」と叫びながら僕を追いかけてきている。 いやこれ無理でしょ。 どう考えても逃げ切れる気がしない。むしろ、差がどんどん縮まってきている。 このままだと追いつかれる。何とかしなければ。 走って逃げられなかった時はどうすれば? この質問に、僕の記憶の中の友人は笑顔でサムズアップしながら 「あきらめろ☆」 僕は絶対にあいつを許さない。 今年のお盆は、父方の祖父母の元へ帰省することになった。 僕の生まれ育った町から車に揺られて数時間。高速道路を走り終えたそこは、どこを見ても田んぼ田んぼたまに畑。民家は少なく、街灯なんてほとんどない。周りを山に囲まれたこの自治体の名前も、〇〇市や〇〇町じゃなくて〇〇村。THE.田舎とはまさにこの事だ。 「よう来たねぇ。元気だったかい?」 昼過ぎに祖父母の家に着くと、おばあちゃんがニコニコと出迎えてくれた。 「母さん、父さんは?」 「まぁた畑に行ってるよ」 「じっとしてられない性分は治ってないか」 父が苦笑いする。 「とりあえず、疲れただろう。中に入ってお昼を食べな」 昼食はそうめんだった。 「ふぅい」 縁側でのんびり食休み。風鈴の涼しげな音を聴きながら、外の風景をながめる。 「そんなに外を見ても、何もないだろうに」 後ろから声をかけられた。首を動かすと、タンクトップにパンツ姿のおじいちゃんがいた。 「お邪魔してます、おじいちゃん」 「何を他人行儀な」 鼻をフンと鳴らしながら外に目をやるおじいちゃん。 「何日くらいおるんじゃ?」 「5日だって言ってた」 「そうか。ゆっくりしていけ」 都会は忙しないんだろう。と言うと、おじいちゃんは頭を掻きながらどこかへ歩いていった。
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