1人が本棚に入れています
本棚に追加
自称「霊の視える」友人に、霊が視えてしまった時の対処法を聞いた事がある。
友人は3つある、と言った。
1.視えても無視する
2.絶対に話しかけてはいけない
3.触れようなんて論外だ
でも、例えば悪霊の類が向こうから関わってきたら?
この質問に友人は一言、
「走って逃げろ」
そして今、僕は走って逃げている。
それはもう死ぬ気で走っている。
後ろをチラリと見てみると、血まみれの少女が「キャハハハハハハハハハ」と叫びながら僕を追いかけてきている。
いやこれ無理でしょ。
どう考えても逃げ切れる気がしない。むしろ、差がどんどん縮まってきている。
このままだと追いつかれる。何とかしなければ。
走って逃げられなかった時はどうすれば?
この質問に、僕の記憶の中の友人は笑顔でサムズアップしながら
「あきらめろ☆」
僕は絶対にあいつを許さない。
今年のお盆は、父方の祖父母の元へ帰省することになった。
僕の生まれ育った町から車に揺られて数時間。高速道路を走り終えたそこは、どこを見ても田んぼ田んぼたまに畑。民家は少なく、街灯なんてほとんどない。周りを山に囲まれたこの自治体の名前も、〇〇市や〇〇町じゃなくて〇〇村。THE.田舎とはまさにこの事だ。
「よう来たねぇ。元気だったかい?」
昼過ぎに祖父母の家に着くと、おばあちゃんがニコニコと出迎えてくれた。
「母さん、父さんは?」
「まぁた畑に行ってるよ」
「じっとしてられない性分は治ってないか」
父が苦笑いする。
「とりあえず、疲れただろう。中に入ってお昼を食べな」
昼食はそうめんだった。
「ふぅい」
縁側でのんびり食休み。風鈴の涼しげな音を聴きながら、外の風景をながめる。
「そんなに外を見ても、何もないだろうに」
後ろから声をかけられた。首を動かすと、タンクトップにパンツ姿のおじいちゃんがいた。
「お邪魔してます、おじいちゃん」
「何を他人行儀な」
鼻をフンと鳴らしながら外に目をやるおじいちゃん。
「何日くらいおるんじゃ?」
「5日だって言ってた」
「そうか。ゆっくりしていけ」
都会は忙しないんだろう。と言うと、おじいちゃんは頭を掻きながらどこかへ歩いていった。
最初のコメントを投稿しよう!