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「おい母さん、スイカを取って来たろう。あれを出してやれ」
「さっきお昼を食べたばかりですよ。あなたも早く食べちゃってください」
「またそうめんか。これで3日連続だぞ」
「あなた、昨日もそう言って枝豆しか食べなかったじゃないですか。いいからさっさと食べてください」
台所の方でそんな会話が聞こえてくる。再び外へ目をやる。
おじいちゃんは何もないと言ったけど、都会で生まれ育った僕からすれば、田舎のこういうのどかな風景はとても真新しいし、心が安らぐ場所だ。
聞こえてくるのは、わずかな生活音と風鈴の音。それに自然の風や草木に虫の声。クーラーなんてなくたって、暑さをほとんど感じない。とても気持ち良い空間だ。
目を閉じる。心地良い空間にいるせいか、それともここに来るまでの長い移動に疲れたためか、あっという間に眠気がやってきた。床に寝転がると、すぐに意識が溶け出していった。
・・・・・・・・・・・・?
誰かが読んでいる気がして目を開けた。
体を起こす。辺りを見回し、耳を澄ませてみても、誰もいないし声も聞こえない。
気のせいか? 首をかしげていると、ポケットに入っている携帯が鳴った。
見ると、学校の友人からメッセージが届いている。
『知らない人にはついていっちゃダメだぞ☆』
「僕は小学生か!」
思わず声に出してツッコミをいれてしまった。
『よく分からないメッセージを送るな!』と返信して携帯をポケットに入れ直す。
「おにいちゃん」
突然。そんな声が聞こえた。
「え?」
声を漏らす。もう一度周りを見回すけど、この部屋の中には僕以外誰もいない。
「おにいちゃん」
もう一度、声が聞こえる。外から聞こえる。
縁側の向こうへ目を向けると、そこにはおかっぱ頭に赤いワンピースを着た、小さい女の子が立っていた。
「・・・・・・」
何ていうか、マルコちゃーーおっと自主規制自主規制。
「おにいちゃん」
女の子は、僕と目が合うとニコリと笑った。
「あそぼう?」
親戚の子だろうか? もしくはこの近所の子? 何にせよ、小学生くらいの小さい女の子に遊びたいと言われたら、断る訳にはいかない。
「いいよ。何して遊ぶ?」
「あっちに行こー」
そう言って、外を指した。
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