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私は落ち着かなくて思わず窓を開けた。
「寒い……」
もうすぐ三月だが、窓を開けると外の空気はまだまだ冷たい。
外から入ってきた突然の冷気に、数人のクラスメイトが私に冷ややかな視線を送ってきたのを背中に感じて、私は結局窓を閉めた。
教室は自由登校ということもあって疎らだ。
それはもうすぐ私達は卒業式を迎えるから。
『ガラッ!』
扉が開く音に反応して私は勢いよく振り返る。
「鈴宮……」
振り向いた先には同じクラスの男の子、坂本亨君。
私の好きな人。
彼は扉を開けて私の名前を呼んだが、その顔は無表情で感情を読み取ることが出来ず、私は言葉を発っせずにいた。
「俺、受かった……」
やっと出てきた彼の言葉に安心して、緊張していたせいかガク~と肩の力が抜けた。
「黙ってるし無表情だったから、落ちちゃったかと思ったじゃない……」
「ごめん……。あれだけ担任から無謀だって言われたから受かるとは思わなかったし、今でも信じられないし……」
彼の表情は合格したことに余程驚いているのか未だに無表情だ。
とにかく良かった。
第一希望の大学に受かって。
あ。
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