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「俺の父さん、この会社の常務。つまり、お偉い様」 そう言った彼の表情は何故か自信有り気な笑顔。 「……それがどうかしました?」 私はその言葉の意味を理解出来ずに眉間に皺を作りながら訊き返す。 「だーかーらー、今まで残業とか頼まれたこと無いわけ。ちなみに家で仕事をしてこいなんて言われた事もないわけ」 「は?」 私はその一言に唖然とする。 「じゃそういうことだから。お疲れ様~」 そして勝手にそう言い残して、彼は颯爽とオフィスを出ていった。 残された私は依然、唖然としたまま。 親が本社の常務? 残業したこと無い? 家で仕事のことを考えたことも無い? だから何なわけ……? 意味がわからない!! このチームって引き抜きチームじゃないの!? 私は暫く唖然としたまま動けなかった。 そして金曜日。 今日は此所に来てからの初めての山場。 デザイン班は昨日もっと煮詰めるために残業をしていった。 私は資料がどうなったかが気になり、早目に家を出た。 「おはよう、鈴宮」 オフィスに入ると坂本君が既に居た。 昨日から彼を避けていたせいで私は少し身構えた。
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