iNG.5

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御屋敷の中は、絵画やら、壺やら、花瓶やら、庶民には買えそうもない高そうなものばかり。 とりあえず触れないようにしよう……。 天井は無駄に高すぎて声が響きそう。 床は大理石だろうか。 こんな所、壊したり欠けたりしたら怖いから毎日歩きたくない。 そして連れて来られた部屋は、これまた高そうな小さめの机とソファーが並んでいた。 そのソファーに会長は先に座っていた。 「ただ部屋に入るだけなのに、何でこんなに時間掛かってるんだ」 会長はあからさまに不機嫌そうな表情。 その態度に圧倒された私は身体を竦めた。 「すいません」 え。 私が竦めた瞬間、あの神島仁が大人しく頭を下げて。 わ、私も謝らないと! 神島仁の態度に驚きながらも私も頭を下げる。 「すいません!本日はお招き頂きありがとうございます!お口に合うか分かりませんが、良かったらどうぞ!」 私は昨日デパートで買って来たとらやの羊羮の入った紙袋を、これまたマナー講座の本に載っていた通りに会長の前まで行って差し出した。 だが会長は、最初は私の言葉を無表情で聞いていたが、すぐに不満げな表情を浮かべた。 「とらやの羊羮か。これは、食べ飽きてしまった 」 そして更に不機嫌そうに溢すと紙袋から視線を外し、私が差し出しているのにも関わらず会長は一向に受け取ろうともしない。
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