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「坂本君、おめでとう」
遅くなってしまったが、笑顔で心からお祝いの言葉を伝えた。
「ごめん……。まだ鈴宮の結果出てないのに……」
すると坂本君は申し訳なさそうな顔を作る。
彼の言った通り、実はまだ私の進路は決まっていない。
私の合格発表は卒業式の前の日だ。
「なんで謝るの?謝ることないからね」
「ありがと……」
そう言ったらやっと彼は笑ってくれた。
「……鈴宮」
「ん?」
彼は私が立っている窓の傍まで来た。
「卒業式、公民館使うんだよな」
「そうだね」
「あと五日だな」
「そうだね」
彼は突然当たり前の事を繰り返す。
どうしたのだろう。
「あのさ……」
「なぁに?」
どうしたのか分からず私が少し顔を傾けて訊き返すと、坂本君は口籠りながら俯いた。
今度はどうしたんだろ?
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