iNG.0

3/9
2030人が本棚に入れています
本棚に追加
/884ページ
「坂本君、おめでとう」 遅くなってしまったが、笑顔で心からお祝いの言葉を伝えた。 「ごめん……。まだ鈴宮の結果出てないのに……」 すると坂本君は申し訳なさそうな顔を作る。 彼の言った通り、実はまだ私の進路は決まっていない。 私の合格発表は卒業式の前の日だ。 「なんで謝るの?謝ることないからね」 「ありがと……」 そう言ったらやっと彼は笑ってくれた。 「……鈴宮」 「ん?」 彼は私が立っている窓の傍まで来た。 「卒業式、公民館使うんだよな」 「そうだね」 「あと五日だな」 「そうだね」 彼は突然当たり前の事を繰り返す。 どうしたのだろう。 「あのさ……」 「なぁに?」 どうしたのか分からず私が少し顔を傾けて訊き返すと、坂本君は口籠りながら俯いた。 今度はどうしたんだろ?
/884ページ

最初のコメントを投稿しよう!