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*** 「部長、どこで油売ってたんですか?大変なことになってますよ」  コーヒーショップを後にした佐藤がエレベータを降りて、職場のフロアに足を踏み入れた途端、待ち構えていたように部下の沢田が駆けつけてきた。 「発注ミスがあったらしくて、例の、ガラスレンズの納入が期日に間に合いそうもないんですよー。  さっきサンテックさんから連絡があって発覚したんですけど」  沢田はまくしたてて一気にしゃべった。かなり焦っているようだ。 「ああ、直前になって発注量を変えたヤツ?」  顔色一つ変えず、のんびりした口調の佐藤に余計焦りを感じるのか、沢田の声が一段と高くなる。 「そうです。どうしましょう!?」  佐藤は、大きな深呼吸を一つしてみせてから沢田の方に向き直った。 「大丈夫だよ。何とかなるから落ち着け。  取りあえずサンテックの村田さんと話してみた?」 「話しましたよー。でもいきなりそんなに早く納入するのはムリだの一点張りで」  泣きそうな声になる沢田である。  最も沢田が泣きそうになるのも無理はなく、今回の発注は変則的であった上に、沢田の課で進めていたことであったので、このヘマは間違いなく彼に責任があったのである。  オロオロしている沢田を尻目に、佐藤は発注のやり取りのメールを見ながらさっさと先方に電話を始めた。  何やら、話し込んでいるようだったが、時折笑い声をあげながら話す様子は、まるでただの世間話にしか見えない。  沢田はじりじりしながら佐藤を見ていた。  ようやく電話を切ると、佐藤は沢田の方を向いて大きなため息をついた。
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