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「沢田君、困ったよー。半分ぐらいは何とかなりそうだけど、納品が立て込んでるから全部はムリだって。  全部納入なんて、間違いなく過労死する従業員が出てくるからできないって言われた。  過労死されたら、こっちも困るもんなァ」 佐藤は困ったように腕組みをしながら椅子を左右に回す。 のんびりしている佐藤を見ながらも、沢田はサンテックが半分納入をのんだことさえ信じられなかった。 沢田が電話をした時は、ムリですの一点張りで全く聞く耳も持たなかった。 「一体、どんな魔法の言葉を使ったんです?   私が電話したときは取りつく島もありませんでしたよ?」 沢田が驚いて訊ねると、佐藤は憂鬱そうにため息をついた。 「ホラ、半年ほど前に新型ヒンジをサンテックさんに発注したことがあったじゃない。  どうしても、って頼まれて。  あの時、サンテックさんの受注状況の話を詳しく聞かせてもらったんだよねー、   まさかあの時の話がこんなとこで役に立つとは」 「……脅しをかけたんですか? 他社よりもこっちを優先しろって」 「そんな、人聞きの悪いこと、言わないでくれよ。  まあ、でも、サンテックさんとこも大変だろうから、ギリギリ半分までだろうなー、納入出来たとしても」 何で部内者のように事情を知ってるんだろうか、と沢田が訝しがったが、お構いなしに佐藤は続けた。 「沢田君、確か溝口硝子にも同じの頼んだ事あったよね。  できないか聞いてみてくれるか?  あと、デジタルライツにも連絡取れる?」 「溝口硝子!いけるかもしれません。早速連絡してみます」 沢田は弾かれたように椅子から立ち上がると、バタバタと資料を探しに行った。 何で溝口硝子を思いつかなかったのだろう、と自分のまぬけさに呆れつつも、沢田は慌てて電話する。 溝口硝子の担当者は思わせぶりなそぶりを見せてから、回答してきた。 納入出来る事は出来るが、従業員を総動員させなければならないので、とても通常の価格では引き受けることが出来ないと言って、3倍近く高い値を提示してくる。 足元を見られて、沢田は悔しい思いで一杯である。 発注する時にアイツがちゃんと確認してさえいれば…、イヤ、今は愚痴を言ってる場合じゃない、と我に返り恐る恐る佐藤に切り出した。
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