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沢田が暫く佐藤の電話を待っていると、隣りに来た事務の女の子の安藤はるなが話しかけて来た。 「何で、部長が話をするとトントンと決まっちゃうんでしょうね。飄々としてるけど、指示は的確だし、決断は早いしステキですよね」 沢田は、また佐藤教信者が増えたな、と内心苦笑しつつ返事をする。 「安藤さん、部長にコナかけようとでも思ってんの? 無駄だよー、部長は愛妻家だから」 「そんなヘンなこと、思ってないですよ。沢田課長じゃあるまいし。  部長って大人の男、って感じでステキだなってだけの話ですよ」 「はいはい。安藤さんも佐藤教の信者ってわけね」 「何ですか、それ」 安藤はるなはおかしそうに沢田に聞いた。 「安藤さんは異動してきたばっかで知らないかもしれないけど、佐藤部長はモテるんだよー。  バレンタインなんかすごいからね。君ぐらいの年の子がいるってのにさ、ウチに来た女子社員はみんな部長、部長って他の男子社員には振り向きもしないんだよ」 「そっかー、ライバル多そうだなぁ」 「ちょ……! マジで不倫とか考えてないよね!? やめてよね、そういうもめ事はヨソでやってよ?」 「沢田課長ー。何、あせってんですか。冗談に決まってるでしょう?」 安藤はくすくすと笑う。 「……ったく、最近の若い女の子にはついていけないよ」 沢田は愚痴をこぼした。
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