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「確かに。わかりました。桜井にはきつく言っておきます」
沢田は真面目な顔で返事をした。
「じゃ、後はよろしく。契約書、出来上がり次第オレに送ってくれる?」
「了解しました」
そう言うと、沢田は佐藤のデスクから離れていった。
人気がなくなって、佐藤が、机の上に無造作に置かれていたケータイに何気なく目を落とすと、テキストが届いていた。
優香からのメッセージだ。
タイトル:3時のお茶
本文:佐藤さん
さっきはコーヒーをご一緒できて楽しかったです
またお茶におつきあいください
小泉
オフィスに戻って来てからのバタバタで優香とお茶していた事などすっかり頭から抜け落ちていたが、テキストを見てふっとさっきのことを思い出した。
飾り気のない文字に、あっさりしたメッセージが何となく好ましい。ケータイ同様余計なものが何もなくさっぱりしている。この距離感が心地よかった。
トシのせいか、佐藤は途切れなく入ってくるラインのメッセージやデコメールが苦手だ。
メッセージが入ったら入ったで気になるし、返信も強要されているようで面倒くさい。
小泉のテキストにはそんな煩わしさもなく、昼間のちょっとした会話に和んだ事もあって、佐藤も気軽に返事を打った。
タイトル:Re:3時のお茶
本文:小泉さん
こちらこそ楽しかったです
佐藤
是非またご一緒して下さい、という文言を入れようか一瞬迷った佐藤であったが、結局は簡単な挨拶だけにした。あまり深入りしてはという自重の気持ちがあったのかもしれない。
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