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それから程なくして、寒さが一段と厳しくなった11月のなかば頃。
佐藤は、中学以来の大親友、山本から一杯飲みに行かないか、と誘われた。
そろそろおでんと熱燗が恋しくなる季節だ。
暗黙の了解で、二人は行きつけの一杯飲み屋で待ち合わせをした。
山本が5年前に転勤で丸の内に戻って来て以来、ちょくちょく仕事帰りに一杯引っかけて帰るのがいつしか二人の習慣になっている。ヤキモチやきの山本のカミさんが、佐藤と飲みに行くとなれば快く送り出してくれるため、今日もカミさんの愚痴をいいに佐藤を誘ったらしかった。
長い付き合い、お互いのカミさんのこともよく知っているし、カミさんに言えないようなことも知っている。
熱燗を三本ほど空けていい気分になった山本は、ため息をつきながらクダを巻いた。
「この前さ、キャバクラ行ったのがバレちゃって、ウチのヤツ、実家帰るって息巻いてんの」
情けなさそうな顔をする山本を、佐藤が適当にあしらうのもいつものことだ。
「何を今さら。キャバクラ通いなんて昨日今日始まった事じゃないだろ?」
山本は、我が意を得たりとばかりに、膝をたたいて首を縦にふる。
「そうだろ? だからオレもそう言ったんだよ。そしたら、アイツ、マジで怒りやがんの」
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