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コーヒーを飲みながら、優香の視線は自然と出入り口の方に向かった。何となく、佐藤を探すのがクセになっている。 一息ついていると、佐藤が店に入ってくるのが目に飛び込んで来た。優香は考える事なくすぐに立ち上がって佐藤に近づいて行った。 「佐藤さん、今日はよくお会いしますね!」 声が弾んでいる。 優香は佐藤に会えて嬉しかった。心が浮き立つのが自分でもわかった。 佐藤とのたわいもない会話はいつも優香のささくれだった気持ちを和らげてくれるような気がするのだった。まるで、荒れ狂った波がないでいくように、すーっと優香の心が穏やかになっていく。 順番を待たされてイライラとしていた気持ちがすっと消えた。 「コーヒーが好きなので、飲みたくなるとすぐ来ちゃいますよ。小泉さんこそ入り浸ってませんか」 佐藤は、優香の手にしていたコーヒーに目をやって楽しげに笑った。 「あの…」 佐藤の包み込むような穏やかな笑顔を見ていたら、優香は急に胸がいっぱいになって黙り込んでしまった。 言葉が続かない。佐藤は柔らかな表情で話の続きを待っている。 佐藤にじっと見つめられて、息が止まりそうだった。心臓の鼓動のドクン、ドクンという音だけが耳について、優香の胸の高鳴りは収まりそうもなかった。 二人が無言になったその時、さっきの女が近づいて来た。空気の読めない能天気女だ。優香がいぶかしく思っていると、先に佐藤がその女に向って声をかけた。 「美智子、先に来てたんだ」 気安い言い方に、優香は狼狽した。
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