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人気のないオフィスに戻ったら、余計にカッカとしてきた。自分だけが週末の夜の楽しい気分から取り残されたようで、苛立たしさが増幅する。本橋も田崎もとっくに帰っており、優香だけが一人残って仕事をしていた。
佐藤と美智子の楽しげな様子がふと頭に蘇る。
美智子はほんのり頬を紅く染めて、甘えた声を出していた。
なにがとんかつはダメよ、さしみか焼き魚なんて文句が多い……黙って食べにいけばいいのに!などと、心の中で美智子をののしっていた。
優香はただ……
佐藤の顔を見たかっただけ……声を聞きたかっただけ……
ちょっとした、何でもない世間話をして、気持ちを少し緩めたかっただけだ。
お疲れモードのところを、少し癒されたかっただけ。
それなのに。
それさえ邪魔されるなんて。
そして、優香はなす術もなく、ただ呆然と二人が仲良く去って行くのを見るしかできなかったのだった。
イライラする。
仕事がちっともはかどらない。
なおも黙々と書類をみていると、ふいに電話が鳴った。
友達の香織からだ。
何でも合コンをしているのだが、急に一人キャンセルが出たのだという。
そんな人数合わせのような形で参加するのはいやだよと言ってみても、香織は、金曜日の夜に仕事なんかしないよ、とか、意地はってないで出ておいでと、強引に優香を誘ってくる。
イライラするばかりの優香は、香織をあしらうのも面倒になり、合コンに合流することにした。
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