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「スミマセン、自己紹介するのをすっかり忘れていました。
ちょっと慌ててますね。
私、小泉優香と申します」
優香が名刺を差し出して来たので、佐藤も慌てて胸ポケットを探る。テーブルの上に自分の名刺を差し出して、優香の名刺を受け取った。
名刺によれば、彼女はすぐ近くの法律事務所に勤めている弁護士らしかった。
優香は、佐藤の名刺を受け取ると、じっくり眺めた。
「佐藤典之さんですね。
イシバシ電機産業の部長さんか。
あら、佐藤さんの職場もこの近くなんですね」
丁寧に名刺をしまいながら、優香は嬉しそうに微笑んだ。
なるほど、言われてみれば、佐藤には大企業の部長らしい落ち着いた風情が漂っていた。
年は50をいくつか超えたぐらいだろうか。
年の割にはスマートでユーモラスな雰囲気がなかなか悪くなかった。
「一番近いコーヒーショップがここなのでよく買いに来るんですよ」
佐藤がそんなことを言うと、優香もパッと顔を輝かせた。
「私も。
コーヒーが大好きなのでしょっちゅう。
特に、ここの席に座ってぼーっと通りを眺めながら飲むのが好きなんです」
「自分だけの特等席、ってわけですか」
佐藤がコーヒーをすすりながら相づちをうつと、優香は一層楽しそうに話を続けた。
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