#2

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心の中で押し殺していた感情が溢れ出す。 涙が止まらなかった。 圭太は、優香を抱き寄せて、ぎゅうっと抱きしめてくれた。 優香の頭を抱えるようにして、耳元で優しく慰める。 「そうだったんだ……それはツラかったよね、優香さん、よく頑張った」 それから、圭太は優香の頭にそっとキスをした。 「……何? これ?」 急に我に返った優香は、自分でも可愛げがないなあと思いつつも、年下の男にあやされるように慰められて、悔しいやら気恥ずかしいやらで思わず反発した。 それでも圭太は優香を抱きしめたまま離さない。 「優香さんがまっすぐで可愛いから……このままオレのものにしたいな……」 最後はささやくような掠れ声だった。 頭の中で、こんなセリフにだまされちゃいけない、なんて思ってはみたものの、優香は抵抗することもせず、そのまま圭太に抱きしめられていた。……不思議に気持ちが落ち着いてくる。 半分は自暴自棄な気持ちで、半分は圭太の優しさにすがるような気持ちだった。 そうこうしているうちにお開きの時間になった。 飲み会はそれなりに盛り上がったようで、皆でカラオケに行こうと話はまとまりつつあったが、優香は頑に断った。 「不機嫌な人がいても面白くないからさー、みんなで行って来て」 優香だって、決していつもいつもこんなに嫌みな態度を取ることはないのだ。しかし、今日は全く自分がコントロールできなかった。 美智子がそもそも気に入らなかったことに始まって、佐藤が美智子と楽しそうに出て行ったのを見たのも悲しかったし、それが原因で他の人に不機嫌に当たり散らしているのも情けないし、そういうネガティブな感情をうまく切り替えることが出来ない自分にも嫌悪感があった。 やぶれかぶれになっているのが自分でもわかっていながらもどうにもこうにもできなかった。 「じゃ、オレ、優香さんを送って行くよ」 圭太は当たり前のようにそういうと、呆気にとられている他の皆を尻目に、優香の手をとってさっさと飲み会から消えた。
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