#3

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次の朝、優香はこの季節にしては明るい日ざしと、遠くの方で聞こえる車の音で目を覚ました。 隣りを見ると、見覚えのない男が一緒にベッドに入っている。しかも彼は裸のようだ。はっと気づいて、恐る恐るシーツの下を見れば、優香も何一つ身にまとっていなかった。 「…………」 夕べのことはほとんど覚えていない。 何があったのか思い出そうとしたら、猛烈な頭痛が襲って来て、しこたま酒を飲んだ事だけはすぐに理解した。 「いたたたた……」 思わずうめいたら、隣りの男が目を開けた。男はニコッと笑って優香に、おはよう、と声をかけた。 優香は沈んだ声で聞いた。 「これってクロだよね……」 「クロだよ」 男は事も無げに答える。そして続けた。 「帰って来てからも、ワインを3本開けたよ。優香さん、相当飲んでたの、憶えてない?」 そう言われると、合コンで知り合った男と一緒に帰って来て、怒りに任せてさらに何本かワインを開けたような気はする。 確か、圭太……そうだ、佐藤圭太という名前だったはずだ。 「うっすらとしか。……ま、しょうがないか、やっちゃったもんは」 なんでもないことのようなふりをして強がってはみるものの、圭太には落ち込んでる事はあっさり見破られた。
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