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若干肌寒かったが、外の空気はピリッとして気持ちのいい朝であった。 お腹を満たした後、二人は公園を通りながら川沿いの道をぶらぶらする。圭太とこうして並んで歩くのも案外悪くなかった。 圭太は、さりげなく優香の手を握りながら視線を前にむけたまま何かのついでのようにぽろりと言った。 「優香さん、昨日さ、『佐藤さんなんか嫌いだー』とか『もう会ってやらない』とか言ってたの憶えてる?」 優香は思わず圭太の顔を見返した。 全く記憶にない。夕べは相当酔っていたようだ。 憶えてない醜態を他人にさらされる、というのはあまり愉快なことではない。優香は気まずい思いで一杯になった。 「最初、オレのことかと思ったんだよね。そいつも『佐藤』って言うんだ。ホント、どこにでもある名前だよね」 圭太は苦笑いしながら続ける。 「他は?何か言った?」 「あたしは圭太の方がずっと好きなんだー、とか?」 優香、驚いて圭太を見返す。 「うそっ?!」 「うそ」 ひっかかったー、とでも言いたげな顔で、圭太は陽気に笑い出した。 「ちょっと!真面目に答えてよ」 確実に圭太の方が年下のはずなのに、優香は振り回されっぱなしだった。圭太は、そんな優香に全く動じる事もなく、優香を引き寄せると耳元でささやく。 「憶えてない事なんてどうでもいいじゃん。そんなヤツほっといてオレと付き合おう、ね?」  それだけ言うと、圭太はゆっくりと優香の唇に自分の唇を重ねた。 それは、圭太の欲望が伝わって来るような、絡みつくようなキスだった。
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