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気がついたら優香の足はコーヒーショップに向かっていた。 脳裏には佐藤の顔がちらついている。 どんなに圭太に気持ちを持って行こうとしても、ふっと気をぬいた瞬間にはいつも佐藤のことで一杯になっていた。 冷静になれば、圭太と付き合って好きになるはずだから…… 一度佐藤の顔を見て、話をしたら……きっと、このざわざわとした落ち着かない気持ちが整理されて、すっぱり圭太に気持ちを切り替えられるはずなんだから……そんな風に自分で勝手に言い分けて、コーヒーショップの扉を開ける。 必死の顔で店内を見渡すが、佐藤の姿の見えるはずもない。 向こうも仕事が忙しいのかもしれない。 毎日来てるとは限らないんだし…… 待ち合わせしているわけじゃないんだから、会えなくたって仕方がないの、分かってるでしょ? 自分にいろいろ言い聞かせるが、佐藤に会えなくて優香は焦れていく。 顔が見たい……穏やかににっこりと微笑む佐藤。 声が聞きたい……低くて心地よい落ち着いたしゃべり声。 頭の中は佐藤のことであふれんばかりだった。 次の日も、その次の日も、優香はせっせとコーヒーショップに通った。 すれ違ってばかりなのか、何なのか全く佐藤には遭遇しない。 会えない期間が長くなるほどに、佐藤が幻影のように優香につきまとい、圭太のことは意識から遠のいていくのだった。 コーヒーショップに通う回数が増えて行く気がする。 思い切ってケータイにメッセージでも送ってみようと思い詰めてみるが、もしかして佐藤に拒絶されているのではないか、と思うと、それもできなかった……。 優香はコーヒーショップの前を通る度に、カウンターに並びながら、辺りを見回して佐藤の姿を探すのがすっかりくせになっていた。
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