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いかにも嬉しそうに顔をほころばせる優香に、佐藤は一瞬見とれた。堂々とした、自信に満ちあふれた笑顔だった。 まるで、佐藤が「うん」というのが分かっていたかのような。 刻一刻と変わる優香の表情は実に豊かでつい引き込まれてしまう。佐藤が言葉もなく優香に見とれていたら、優香は、今度はすぐにけげんそうな顔をして佐藤に話しかけた。 「どうかしましたか? 私の顔に何かついてます?」 いえ、あなたがあまり素敵な顔をするのでーー、言おうとして慌てて言葉を飲み込んだ。 「月曜だからでしょうか、ちょっとぼーっとしたみたいです。休みボケですかね?」 優香に向けた言葉は、およそ思っていた事とは関係のないことだった。 「あら、週末は忙しかったんですか? また奥様とデート?」 優香の方も思ってもないことが口から飛び出した。 この前の佐藤と美智子が一緒に連れ立って歩いたことがやっぱり頭に残っているのであろう。 「そうですね……言われてみれば確かに遠出しました」 それを聞いて優香は露骨な膨れっつらになった。 みるみる不機嫌な顔に変わった優香が可笑しくて、佐藤はぷっと吹き出した。 「小泉さんはすぐに顔にでますね。もしかして……焼いてくれたのかな」 つい、口が滑った。 佐藤は、しまった、踏み込みすぎた、と即座に後悔したが、後の祭りだ。 図星だったのだろう、優香はこんどはひどく狼狽した顔になる。 そんな表情もチャーミングだった。 「小泉さんは、本当に表情が豊かで……素敵ですね」 また、思った瞬間にそのままするりと口から言葉が飛び出していた。 「あの、私をからかってます?」 憮然としてちょっとだけ泣きそうな顔をした優香を見て、佐藤は自分の軽はずみな言動を猛烈に後悔した。 何とフォローすればいいのか。言葉に詰まる。何だか、スムーズに会話が進まない。
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