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「今回の案件は、私が取って来たのに、上司が横取りしようとしてるんですよ。  ちょっと難しい事情があって、私は似たような案件をやったことがあったから、私に声がかかったんです。    それなのに……上司が横取りして、面倒なところだけ私にやらせようとしてるのがミエミエなんでハッキリ言ったんですよね。  それで、もう、喧嘩みたいになっちゃってて、だから、絶対、他の人にやらせるわけにはいかない、って思ってて必死なんです」 「それは、そんな上司には負ける訳にはいきませんね! ぎゃふんと言わせなきゃ」 話しているうちに思い出して来たのか、怒りを露わにする優香に、佐藤は小さく拳をふりながら応じた。 「ぎゃふん……って、それ、いつの時代の言葉ですか?」 優香はけらけらと笑い出した。笑い転げていて、目にはうっすらと涙を浮かべている。 「そんなにおかしかったですか?」 佐藤には、優香の表情の変わりようが微笑ましく感じられる。 目をぱちくりとさせて聞き返す佐藤に、優香は大輪の花が開いたかのような笑みをたたえた。 「何だか、ガンバロウってやる気が出てきました。私が上司と喧嘩してる、っていうと、呆れる人ばかりで、応援してもらったの、初めてなんです」 「小泉さんがとってきた仕事でしょう。上司の嫌がらせなんかに負けちゃいけませんよ」 なりふり構わずガツガツと仕事をする優香の姿が目に浮かぶようだ。 きっと、今回の仕事とかいうのも、その熱意で取ってきたのだろうと容易に想像できた。 優香が注文したコーヒーを受け取ってお金を払おうとすると、すかさず佐藤が横からお金をだした。 「これは、僕の応援の気持ちです。頑張ってください」 「ありがとうございます」 二人はコーヒーショップを後にした。
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