#3

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佐藤は、楽しそうに、幾分自慢げに話す優香にただただ見とれていた。 優香はきっと、どんなことにも情熱を傾けてのめり込むのだろう。 「あ! また我を忘れてしまった……」 急に気づいて照れた顔をする優香がまた……たまらなくセクシーで魅力的だ。 胸の奥がドクーゥンと大きく波打つ。軽い恍惚感に襲われて、佐藤はクラクラしていた。 ーーこの人はどうしてこうくるくると表情が変わるのだろう。 佐藤は沸き上がる自分の感情に戸惑っていた。 優香がふふっと笑った。 「どうしてかな。佐藤さんと話をしてると……すぐに分別をなくしちゃうみたい。  私ばかり夢中になっちゃって退屈ですよね?」 「いえ……そんなことはありませんよ」 本音を言えば、話し続ける優香の顔をずっと見ていたい。 そんなことを口に出来るはずもなく、佐藤は静かに笑った。 「仕事だけじゃなくて、何事にも全力投球なんですね、小泉さんは」 「時々暑っ苦しいって言われますけど」 今度はすねたような顔になる。 さっきとは別人のようなひどくあどけない表情だった。 「どんなチーズケーキを作るんでしょうか。話を聞くだけで美味しそうですね」 優香はたちまち嬉しそうににっこりと笑う。 「結局ケータイのお礼もちゃんとしていないし、今度、作って持って来るので、是非食べて下さい」 優香の順番になったのでカウンターに向うと、最近すっかり仲良くなっている店員が、優香が何か言う前にトールコーヒーですね、と注文を受けてくれた。 佐藤はやり取りを聞いて笑った。 「コーヒーはいつもブラックなんですね、僕とは大違いだ」 「ブラックが一番コーヒーの香りが楽しめません?」 「大人だなぁ」 二人は顔を見合わせて笑う。 コーヒーを受け取った後、優香と佐藤は並んで店を出た。別れ際に優香が小さい声で佐藤に言う。 「列がもっと長かったらよかったのに残念です。それじゃ、また!」 優香はさっそうと走って立ち去って行ったが、佐藤は優香の言葉が気になり、優香の後ろ姿をしばらく見送っていた。
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