#4

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優香は喜び勇んでオフィスに戻る。 雲の上まで飛んで行ってしまうのではと思うほど心が軽かった。 この充実感。張り切って仕事が出来そうだ。自然と鼻歌がこぼれでてくる。 その鼻歌を聞きつけて、本橋はうんざりしたような顔になった。 ーー何があったか知らないが、ひどく小泉センセの機嫌がいい。やる気満々で書類の山と格闘している。 優香の機嫌がいいのは結構なことだったが、その分、部下の本橋もしっかりこき使われる。 本橋は、調子に乗って新しい契約とってこなきゃいいんだけどなー、などと不謹慎なことをぼやく始末だ。 書類に目を通していると不意に優香に呼びつけられた。 「本橋君、ちょっと来て」 声のトーンがいつもより高い。 「このメモ、今日中に契約書に仕上げといてくれる? あと、5時からのカンファレンスお願いしていい?」 「僕がですか?」 本橋は驚いた。 優香から全面的に引き継いで担当するのはちょっと荷が重い。 「んー、出来ないなら仕方ないけど、アーツの件は本橋君も最初から関わってるから大体話はわかってるでしょう?  私はオブザーバー的な感じで後からメモをチェックするから、ちょっとやってみてよ。 今日のカンファレンスは本橋君でもハンドルできると思うよ、役員の報酬割当の数字のことしか話さないはずだから」 急に仕事を振られて、本橋はオタオタする。 さっきの契約書も全然進んでないし、夕方からカンファレンスなら今夜は午前様は確定だ。 本橋は目前に積み上がった紙の束をみるだけでうんざりする。 優香は、いつもにも増して張り切って仕事をしていた。 早く帰りたかったので、本橋ができそうなことはどんどん彼に回す。普段だったら、自分でやってしまうようなことも本橋に回した。 今週の予定を考えると、今日ぐらいしか早く帰れそうもないのだ。今晩はなるべく早く帰ってチーズケーキ作りにとりかかりたい。 佐藤はチーズケーキをどんな顔して食べるだろう? 想像するだけで顔がにやけてくる。 優香の頭の中には、圭太のことなどどこにもなかった。
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