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 昼下がりのまったりした時間、店内は意外に混んでいて、優香はようやく席を見つけることが出来た。  周りを見渡すと、ラップトップなどを持ち込んで仕事をしたり、勉強している学生らしき人もちらりほらりといた。  漠然と周りの人を目で追っていると、佐藤がコーヒーを手に席を探してウロウロしているのが目に入って来た。 「佐藤さん……ですよね?」  優香が、佐藤に声をかけると、一瞬戸惑ったような顔をした後に、優香のことを直ぐに思い出したらしい笑顔になった。 「良かったらコーヒー、ご一緒にどうですか?」  優香は佐藤を誘った。 「おくつろぎのところ、お邪魔じゃないですか?」  佐藤は遠慮してみせたが、優香がさらに勧めると誘われるがままにテーブルについた。  店内には他に空いている席もなかった。 「『自分席』は取れなかったんですか?」  佐藤は少しだけ優香をからかうように聞いてきた。  アイスの外れくじをひいたときのような顔で、優香はいかにも残念、といったような声を出した。 「そうなんですよ。毎日のようにコーヒーを飲みに来るんですけど、今日はダメでした。  『自分席』に座れるかどうかで、一日がラッキーかどうか運試ししているようなところがあって……今日はついてないのかなーとか。  何かテンション下がっちゃってます」  しょんぼりする優香を見て、佐藤はおかしそうに笑う。 「席で一日の気分が左右されちゃうんですね」  屈託のない笑顔でそう言われて、カリカリしていた優香の気持ちが少しほぐれてくる。  ゆったりと一杯のコーヒーを楽しんでいる佐藤は、優香とは違う空間にいるかのような不思議な雰囲気を醸し出していた。
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