第2章~何が起きたのだろう・拓哉の章~

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「テンドウ…」 天祥が、「名乗るがよい」と言った名を俺が呟くと、天祥は天仁に。 「墨と筆と紙を用意して来なさい」 と指図し、直ぐ天仁は立ち上がり、部屋の奥にある机へと向かい、机ごと持ち上げ、天祥の前に置き、天祥は筆を取り、筆に墨を付けると、紙に字を書き、そして書き終えた天祥は、字が書かれた方を俺に示して。 「天導…天がお主を導いてくれるという願いを込めた名じゃ」 そう天祥は俺に説明した。 天祥の説明を聞き、天楽が口を開き。 「なるほど…天が導くと書いて天導ですか。自分の名がわからず、自分が何処から来て何処へ行こうとしていたのか、それがわからない彼にとっては丁度よい名でございますな」 そう言って「天導」と書かれた紙を天祥から受け取り、そして天楽は俺の方へと歩み寄り、ニコリと笑みを浮かべ、俺に紙を手渡して。 「天導殿よろしく」 そう天楽は言った。 天楽に導かれるように、天仁、天牧、天凛たちも、俺の方に歩み寄り。 「よろしく」 と挨拶をして来て、そして天祥が再び口を開き。 「天楽、天導に寺の仕事を色々と教えてあげなさい。正式な弟子ではなく居候とはいえ、寺で生活する以上は寺の仕事をしてもらわねばな」 そう天祥が天楽に言うと天楽が。 「承知いたしました」 と、返答した。 こうして俺の寺での生活が始まったのである。 寺での生活を始めて数日が過ぎた頃、天祥が住職を務める寺に変わった人物が暮らし始めた事が、町で噂となり、その人物が、町で暴れん坊の太郎丸と話し、自分が何者で、何処から来て何処へ行こうとしていたのか、それらがわからない人物であると噂となっていた。 その噂は、この辺りを治める殿様の知るところとなる、この辺りを治める殿様は、近江高島郡を領主で、今や天下人に1番近い人物、織田信長の甥で重臣に名を列ねる津田信澄である。 信澄は自身の重臣の志水加兵衛から、変わった人物が、天祥が住職を務める寺に居候していると聞き、信澄は会ってみたいと思い、寺に迎えを送って来たのである。
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