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寺に信澄の使いでやって来たのは、渡部源右衛門という、侍大将を務める人物である。
源右衛門は寺にやって来ると、門前で応対した天凛に。
「領主、津田信澄様の使いで参った渡部源右衛門と申す者、住職に取り次いで頂きたい」
そう源右衛門は丁寧な口調で申し出た。
これに天凛も丁寧に応対して。
「しばらくお待ち下さい。只今、お会い出来るか確認して参ります」
そう言い、天凛は早足で、門前に源右衛門を残して、本堂の方へと向かった。
本堂奥にある、天祥の自室にやって来た天凛は、天祥に領主の津田信澄の使いが、やって来た事を天祥に伝えると、客間に使いの渡部源右衛門を通すように申し渡し、退室させると。
(もう噂は信澄様の元に届いたか…そうなると信澄様の主君の新しい物や新しい事、そして物珍し物や、珍しい人物に興味深いあのお方の耳に入るのも直ぐやもしれぬのう)
そう考えを巡らす天祥は、天楽を呼び。
「天導に伝えなさい。寺に訊ねて来た客人は、どうやら天導に用事があるようだから、客室に来るようにとな」
そう天楽に伝えると、天祥は客室へと向かった。
天楽が駆け足で本堂から境内と出て来て、ホウキとチリ取りを持ち境内の掃除をしている俺の所へ、やって来て天楽は息を整えると。
「天祥様がお呼びだ」
「天祥様が…?」
「ああ領主の津田様の使いが訊ねて来た。どうやら津田様が天導、お主に用事があるようだ」
「俺に領主の津田様が…?」
「とにかく急ぎ客間へいってくれ使いの渡部様がお待ちだ」
「…?なんだろう?」
そう言い、俺がモタモタしていると、天楽が俺からホウキとチリ取りを奪い取り、俺の背中を押して。
「急げってッ」
と、俺を急かせ、俺は戸惑いながら、頭を掻き、客間へと向かった。
客間にやって来ると、客間の方から話し声が聞こえて来て、何やら天祥と使いの渡部源右衛門が談笑していて、和やかな雰囲気の中、俺は客間へと入った。
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