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匠はたばこに火をつけると、深く吸った。
「俺、捨てられるのかな…」
ぽつりと呟いた匠の言葉は煙と共に消えていく。
「景がいなくなるの、…やだな。」
弱ったように呟く匠を俺は初めて見た。
「あのさ…、そう言うときはこう言うんだよ。好きです、つきあってください、って。」
俺は呆れて言った。
「好きです。つきあってください。」
匠はそのまま復唱した。
「いいよ。」
たばこを揉み消し、匠は俺を引き寄せた。
「ほんとに?」
「うん。後、こう言って?二度と浮気はしません。景だけを大事にします。」
匠はじっと俺の顔をのぞき込むと、真剣な顔で口を開いた。
「二度と浮気はしません。景だけを大事にします。」
「…ほんとに?」
「え?」
「本当にそんなこと、出来る?」
俺が言わせた言葉だけれど、匠がそれを実行できるとは思えない。
「出来るよ。」
そう言う匠を、俺は不信感いっぱいの顔で見つめた。
「なあ、景。今までのは全部お前の代わりだったんだよ。景が俺のそばにいてくれれば、もう他に手を出すなんてしないよ。」
「………まあ、信じてやってもいいよ。」
渋々、俺が頷くと、匠は満面の笑みになった。
「よし!じゃあやろうか!」
「へ?」
「セックスしよ。俺、この一週間、お前に手を出さないようにするの大変だったんだ。なあ、いいだろ?恋人になっての初めてのセックス…。今夜は寝かさないよ…」
うきうきと俺の腕を引き、ベッドへ押し倒す。
匠ってこんなキャラだっけ…?
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