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「吉田!あれ見ろ。」
清水が何かに脅えるかの様に立ち上がり、左側の方に視線を置いていた。
清水の驚き様に驚きながら
「な、なんだよ。」
そう言い。清水が見ている方向に吉田も体を向けると、何者かがこちらに向かって来ているのに気づいた。
吉田と清水の方向へ向かって来ている男は、黒いフードを深くかぶり、顔にはマスクを付けていて、誰から見ても怪しい。
しかし吉田は、「どうせ夢だ。」と怪しい怪しい男の股間にでも右足で思いっきり蹴りを入れる勢いで待ち構えていた。
だか吉田は、男と自分の距離が近くなるにつれ、右手にナイフらしき物を握っていることに気がついた。
それに吉田は一瞬足がビクビクと震えたが、すぐにこの状況が現実ではなく夢だと言うことに安心した。
清水は逃げようと何度も吉田に呼び掛けていたが、それを吉田は無視していた。
そしていよいよ男は、吉田が手の届く距離まで来ていた。だか吉田には先程までの勢いはなく、目の前にナイフを持った男がいる事に、また恐怖を感じてしまった。
それでも男は容赦なく、吉田の左胸にナイフを刺した。
吉田は左胸を右手で押さえながら膝をついて崩れていった。
「いたい、いたい、いたい、いたい」
いままで感じた事のない痛みに吉田は耐えられなかった。
それと同時に清水の事を思い出した吉田は、逃げることが出来たのか気になり、痛みを感じながら清水のいた方向に目線を向けると、清水は血を流しながら地面に倒れていた。
そしてこの公園内に、吉田と清水を刺した男の姿はもう既になかった。
「 し、しみず? 」
清水の名前を呼んだから返事は返ってこない。
恐らくもう息はしていないのだろう。
吉田は「なんですぐ逃げなかったんだ俺は…」
自分の判断ミスを悔やんでいる中、ある重要なことを忘れている事を思い出した。
吉田は安心して激痛を感じながら目をゆっくりと閉じた。
そして静かな声でこう呟いた。
「今日はやけにリアルな夢だったな」
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