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ガレは、蓮の待つホテルに向かいながら、彼に何度も連絡を入れるが、応答はない。
間に合ってくれ、と願いながらガレが蓮のいるホテルに向かう。
ホテルの周りにはパトカーが何台もとまり、あたりは騒然としていた。
間に合わなかったか――
ガレが愕然としていると、前方から声をかける人物があった。
「ガレさん、大丈夫ですか?」
蓮だった。
「何で、お前…」
「いや、まあ、三島から、俺が次のターゲットかもしれないと聞いた時は驚きましたが、犯人はもうつかまりましたし、これ以上被害者がでることは…」
そう言う蓮の胸のあたりをつかみながら、ガレが頭をうつむけて荒い息遣いで言った。
「よかった…」
泣いているようだった。
蓮はどうしたらいいか一瞬迷ったが、ガレの肩をだきよせて、背中をさすってやった。
「もう、大丈夫ですから」
大丈夫なわけはない、とガレは思った。
わずかだが、蓮も震えていた。
ガレがロートスのもとにいる間、怖い思いをしたことは明らかだった。
犯人に出くわしたのかは分からないが、警察は、犯人が動かなければ動けない。
いや、動かない。
そのために犠牲になった人間は、いくばくか。
だから、自分が動かなければならない。
それは、能力をもって生まれた者の宿命だ。
だが、いつまでたっても、慣れないものだ。
自分の少しの油断で、被害者が生まれること。
犯罪者の憎しみに満ちた目と正面からぶつからなければならないこと。
ガレは、過去をかえりみながら、気が遠くなるのを感じた。
それを、蓮がやさしくささえる。
もう、失いたくないものだ。
そう思ったのを最後にガレの意識はとんだ。
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