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「ロートスくんのことだけどね、彼に、君達の話をして、どっちが優れているかなって酒の勢いで言ったらさ、今回の事態になってね。彼、負けず嫌いだから」
三島はそう言って持ってきた缶ビールを開けてぐびぐびと飲む。
「本当に言い訳だな」
ガレが白々と三島を見遣って言う。
「まあ、いいじゃないの。彼、あれで優秀なんだよ?こなしてきた仕事は少ないけど、救った人数では、君に勝るくらいだ」
「だから、何だ?」
ガレが冷たく言い放つ。
「つれないなあ。君も、どう?」
そう言って三島はガレにビールをすすめる。
ガレはそれを断って、三島をねめつけるように見る。
「今はまだ怒りの熱がさめていないようだから、これでおいとまするよ。ではな」
そう言ってビールをぐいとのみほしてテーブルの上に置き、三島は部屋を去っていった。
「なんだよ、あいつ、わけわかんね。ガレさん、大丈夫ですか?」
「本当に食えない男だ。本当に道楽で俺を飼っているだけなのか?本業も経歴も疑わしいものだ」
「経歴なら、四年ほど前まで、学生してましたよ」
蓮が無邪気な様子でそう言う。
「お前は、やっぱり馬鹿だな」
そう言ってガレは、三島がのこしていったビールの缶をごみ箱に投げ入れた。
秋めきはじめた、9月末のことだった。
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