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暖かな午後のひととき。
私のぎこちない演奏に、オカメさんが歌ってくれる。
あっという間に時間は過ぎていった。
一方、学校の方は相変わらずだった。
「音楽室の掃除、後よろしくねー」
五人でするべき掃除を、こうやって私一人に押し付けられるのも、いつものこと。何も思わない。
――いや、今は違う。
「でっかいピアノ…」
私は音楽室の大きなピアノに、興味津々だった。
恐る恐る触れてみる。家の電子ピアノとは全く違う感触だった。
これで弾いたら、一体どんな音が出るんだろう?
湧いてくる好奇心が、どうしても収まらない。
「ちょっとだけなら…」
ドキドキしながら椅子に座り、軽く鍵盤を弾いた。
ポーーン
(こ、これは!)
なんていい響きなんだろう。
今が掃除時間だということなど忘れて、私は一曲丸々弾いてしまった。
――廊下でクラスメイトの一人が聴いていたことも気づかずに。
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