オカメさん

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 音楽がこんなに素晴らしいってことを、あの日のコンサートと、オカメさんが教えてくれた。  カァ、カァ、とカラスの鳴き声が聞こえる。  そろそろ近所迷惑かと、ピアノの蓋を下ろした。 (それにしても、だいぶ弾けるようになってきたな。ピアノ教室にも行かず、独学でここまで弾けるのって結構すごい?)  ちょっとニヤニヤしてしまった。 (将来はピアニスト?!  いやいや、それはさすがに無理か)  コンサートで華麗な舞台を繰り広げてくれた、あのピアニストを頭に浮かべたが、自分と違いすぎてびっくりした。  ちょっと悲しくなったから、気分を上げるためにもう少しだけ弾こう。  そう思い蓋を開けようとして、違和感に気づく。 (何か足りない…)  今日の演奏はなかなかよかった。でも、何か足りなかった。  ――オカメさんだ。 「オカメさん!!」  気づいたときにはもう、遅かった。  オカメさんは、ピアノの上で、動かなくなっていたのだ。
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