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屑鉄、と一口に言っても、彼らが一番に狙うのはただのスクラップではない。高度三千メートル付近を飛ぶ空船都市”スカイ・ノア”からの”落とし物”だ。スカイ・ノアは失われた技術の塊。鉄塊一つ取っても、特殊な加工がされていて、地上では作り出せなかった。故に目玉が飛び出るほどの高値が付く。モノによっては一生遊んで暮らせる。
最も屑鉄屋として当てるためには落とし物を見つけ出す嗅覚とそれを拾いに走る行動力を持ち合わせていればいけない。
この広い地球上にスカイ・ノアは十一しか浮いていない。上に、毎日のように落とし物をするわけでもない。必然、屑鉄屋の争いは激しかった。
「俺があの落し物を拾って、ヤツらにギャフンと言わせてやんだ」
屑鉄屋、十年。
エンキは未だ落し物を拾ったことがなかった。街から出る山のようなゴミを掻き分け、売れそうな物を見つけて糊口を凌いでいる。
屑鉄屋仲間には毎日「お前に屑鉄屋は早え。大人しく誰かの使いっ走りにでもなるんだな」なんて言われる始末。連中が悪意を持って言っているわけではない。エンキの見るに堪えない生活を目の当たりにしての親切心だ。
けれど、その言葉が余計にエンキを意固地にさせている。
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