なくした過去、二度目は夢で

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 柔らかく包み込むような夏の匂いがした。  目を開けると、そこには青々とした草木繁る風景が広がっていた。絵画のような田園風景。空の青と、草木の青と、見事なコントラストで描かれている。  そこには明るく暖かい日差しが降り注いでいた。頭の上のほうで、蝉の鳴き声が聞こえていた。 「りょうちゃん――」  なぜだろうか、この風景、この匂い――とても懐かしい気持ちになっていた。ずっと昔に、どこかに忘れてきてしまったような気持ちに――。 「ねえ、りょうちゃんってば」  背後から、怒ったような声が聞こえて、はっとした。  女の子の声が、誰かを呼んでいるのだった。それは自分に向けられているようだった。  思わず気になって、振り返った。  おかっぱを少し長くしたような髪型の、かわいい女の子が、目の前で頬を膨らませていた。小学校高学年くらい――まだ幼さの残る女の子だった。  水色のワンピース姿で、小さな麦わら帽子を被っていた。 「えっと、君はどこの子?」  訊くと女の子の表情は、さらに不快感を増した。 「……どこの子ってなに? なんの冗談? 同じクラスのくせに」  彼女は眉を曲げた。 「えっ、あっ、ほんとだ……」  自分の掌を見てわかった。とても小さかった。  自分は、子供なのだ。いやそもそも、ではなぜ大人だと思い込んでいたのだろう?
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