naturalism

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「・・・・大地」 「ん?」 「なんで怒んないワケ?」 「え?」 「一年を無駄にしたんだぞ」  自分のせいで。  そういうと、瀧川は驚いたように眼を見開いた。  だって、そういうことなんだ。  本当はずっと、自分は瀧川のことが好きで。  心の奥ではそれに気づいていたくせに、受け入れなかっただけだ。  そのおかげで、瀧川の一年を無駄にした。  当然は必然じゃない。  燈路にいわれなければ、自分はたぶん一生、なにも気づかないままだった。  なにも受け入れることができないまま、瀧川を拒絶し続けたはずだ。  離れることが当然だと、思ったままだったはずだ。  瀧川は一瞬考えるように首を傾げるが、すぐに、ゆっくりと微笑んだ。 「いや、無駄じゃねえよ」  はっきりといわれた言葉。  仁が戸惑い気味に眉を寄せると、瀧川は小さく苦笑を洩らした。 「無駄なんかじゃねえよ。きっと、俺もおまえも考える時間ってのが必要だったんだと思うんだ。お互いな。 俺はわかっていたとはいっても、正直自信があったわけでもねえし、自分の気持ちにさえ、本当は確信がもててたわけじゃねえんだ」 「え?」 「好きなんだろうとは思っていたけどな。正直若気の至りかと思ってもいた」  そういって、瀧川は小さく肩を竦めた。 「けど、おまえが離れていって、マジで気づいたよ。それからは結構必死だったんだぜ? 寄ってくる女みんなはべらせて、おまえが戻ってくるよう仕向けたり・・・・」 「おいおい、おまえの女あそびは俺の嫉妬を煽るためだったのか?」 「当然だろ。あんなの暇つぶしにもなんねえよ。うぜえだけ」 「酷ェ男」 「もとはといえば、おまえが鈍感なのが悪いんだよ」  またその話か。  うんざりしたように顔を顰めた仁を見て、瀧川は愉快そうに笑った。 「ま、いいだろ。もうその必要もねえしな」 「え?」  瀧川の長い指が、仁の前髪にさらりと触れた。  視界が広げられ、少しだけ高い位置にある瀧川の顔が、はっきりと見えた。 「俺の隣にいるのはおまえだけでいいよ」  ひさしぶりに見た、瀧川のうれしそうな笑顔に、心臓が大きく音をたてた。
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