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当然は必然ではなくて。
いままで思っていた当然は、自分が思っていた当然とは違って。
それでも、瀧川の側にいる当然は、これからも、当然のまま。
当たり前のように側にいることが、しあわせってこと。
そういうことなんだ。
「・・・・なあ」
近づいてきた顔。
手は前髪に触れたまま、瀧川が妙に甘ったるい声で囁いた。
「前髪切れよ」
「え?」
小さく首を傾げた自分に、瀧川はふんわりと微笑みかけた。
「そうしたら、俺がよく見えるだろう」
さっきより、ずっとはっきり映った瀧川の顔。
広げられた視界には、瀧川しか映らない。
すべてのはじまりを瀧川の横で過ごして。
すべてのおわりを瀧川の横で過ごす。
当然のように、すべてを共有するし、すべてを分かち合う。
いままでも、これからも、ずっとそれは当然のこと。
触れられた手はあたたかく。
瀧川の笑顔は眩しかった。
触れた唇は、いままで感じたことがないくらい、甘くて。
そして、自分は、この一年が意味のあるものだったと、知った。
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