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一年ぶりに、一日を一緒に過ごした。
朝は一緒に登校して、休憩時間ごとにどちらかの教室に駆け込み、昼は一緒にランチをとって、帰りは一緒に帰宅する。
そして、日中人気のない瀧川の家に上がりこみ、夜まで同じときを過ごす。
当たり前の毎日。
当然だと思っていた日々。
それが、いまは、少しだけ、意味が違う。
自分の気持ちの変化なのだろうか。
少しの緊張感と、はじめて感じる、胸のあたたかさ。
いままで、充分すぎるほど側にいたと思っていた瀧川の存在が、さらに近く感じる。
なんだか、不思議な感覚だと思う。
「どうした?」
ベッドに寄りかかり、ぼんやりと考え込んでいた仁を見て、隣に座っている瀧川が小さく首を傾げた。
「いや・・・・べつに」
「なんだよ。気になるじゃん」
「気にすることじゃねえよ」
「気にするだろ。いえよ」
しつこい追求に、仁は小さく息を吐いて、天井を見つめた。
「・・・・ちょっと、後悔した」
「なにに?」
「なんで、一年間も離れていたのかな、って」
「・・・・」
「勿体ないことしたなって、思って」
ぽつぽつと呟かれる言葉に、一瞬眼を丸くした瀧川が、すぐに笑みを零した。
「随分カワイイこというね、おまえ」
うれしそうに顔を綻ばせながら、瀧川がじりじりと距離を縮めてくる。
仁の肩に腕を回して、軽く力を込めた。
「理由は簡単だぜ」
「あ?」
「おまえが鈍感だからだ」
「・・・・」
うんざりした顔で睨みつけると、瀧川は愉快そうに笑った。
「まあ、いいじゃねえか。そのおかげで、またこうやってそばにいれるわけだし」
「おまえね、もしかしたら一生気づかなかったのかもしれなかったんだぞ。随分と呑気だな」
「それなら俺の甲斐性がないってだけの話だ。しかたねえ」
いともあっさりといい放つ瀧川に、仁は呆れたようにため息を吐いた。
長い前髪が、視界に被さる。
隙間から見えた瀧川は、過去の記憶にはないくらい甘い表情を浮かべていた。
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