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ベッドから降りて、窓に手をかける。
ほんの少しの隙間から視線を落とすと、瀧川と女の姿が見えた。
駄々をこねている様子の女と、それを片手であしらう瀧川の姿。
腕に絡まってくる女の手を、瀧川は容赦なく払い落とす。
なかなか引き下がらなかった女も、瀧川の冷たい態度に、さすがに諦めたのか、悪態をつきながらもときた道を戻っていった。
その後姿を見送ろうともせず、瀧川は玄関のドアに手をかける。
しかし、すぐに中に入ろうとはせず、瀧川はゆっくりと視線を上げた。
再び絡みついた視線。
なにか、言葉を発するわけでもなく、ただ、じっと、仁を見つめる。
真っ直ぐで、貫くような視線。
やっぱり、なぜか泣きたくなった。
『臆病者め』
燈路の言葉が脳裏に響いた。
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