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「それは惜しいことしたな」
「あ?」
浅井は意味がわからないように顔を顰める。
燈路は笑いながら、辺りを見回した。
酔っ払いのオヤジや、若者の集団や、飲み会帰りのサラリーマン。
様々な人間が、輝くネオンの道を通り抜けていく。
この中の誰かが、なにかを見つけてくれるのかもしれない。
なにかを与えてくれるのかもしれない。
自分が求めている、なにかを。
「おまえ、まさか本当にナンパ待ち?」
その言葉にゆっくりと振り返ると、呆れたようにため息を吐く浅井と眼があった。
「ナンパ待ちっていうか・・・・いまゲーム中なんだよね」
「は?」
意味がわからないとでも言いた気に、浅井は眉を寄せる。
そりゃそうだろう。
一人でこんなところをフラフラと歩いていて、それがゲーム。
傍から見ていて意味不明なのは明確。
そんな浅井の表情に苦笑を洩らすと、浅井はさらに眉を寄せた。
「わかるように話せ」
「んーと、いまあるヤツとゲームしてて、とりあえず誰かに声かけられるのを待っている状態」
「なんだそれ」
やっぱり意味がわからない、というふうに、浅井は呆れ顔だ。
それに苦笑を返して、燈路は小さく肩を竦めた。
「一番最初に声をかけてきたヤツについていくっていうルール。タイムリミットは、えーと・・・・あと四十五分」
「おいおい。なんだってそんなヤバイことしてんだ」
「退屈だからかな」
相変わらずの呆れ顔ににかりと笑顔を向ける。
「というわけだからさ、俺、行くわ」
ネオンが輝くうちに。
この手で、なにかを見つけるために。
この手が、なにかを掴めるように。
キッカケなんて、なんだっていい。
ただ、いまから抜け出すキッカケを。
「じゃあ、また来週」
スニーカーで地面を擦り、燈路は踵を返した。
ひらひらと片手を上げて歩き出そうとした瞬間、その腕を勢いよく掴まれた。
「ちょっと待てよ」
「は?」
振り返ると、浅井は意味ありげな笑みを浮かべている。
それに首を傾げると浅井はゆっくりと口を開いた。
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