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なにが知りたいのだろう。
なにが見たいのだろう。
なにかを手に入れて。
刺激ない空間で生きている。
過去は自分と同じ類だった男。
それに、興味を持った。
待ち合わせ場所のファーストフードに現れたマヒトは、相変わらずの男前で、記憶のとおりににやりと笑って見せた。
「よお」
自分の眼の前に腰を下ろし、ふうと、小さく息を吐いた。
そして、口元をゆっくりと吊り上げて薄く笑った。
「突然会いたいだなんて、またどういう風の吹き回しだ?」
その言葉に、燈路は笑いながら、アイスコーヒーの入ったグラスをくるくると回した。
「つれねえな。おまえだって、俺に会いたかっただろ?」
「たまに思い出してはいたけどな」
「たまにかよ」
「極、稀にな」
そう笑いながら、マヒトはホットコーヒーを口に含んだ。
いつもは夜に会っていたせいか、昼間に会うと、妙な感覚だ。
学ランを着込んだマヒトはどこを見ても高校生で、私服を見慣れているせいか違和感を覚える。
煙草と、アルコールを手にしている姿が、自分の中のマヒトのイメージだからだろう。
マヒトも同じことを思っていたのか、燈路のブレザー姿をゆっくりと眺めて、小さく吹き出した。
「おまえ、そうしてみるとちゃんと高校生に見えるぜ?」
「そりゃお互い様だ」
マヒトも自分も雰囲気が似ているのか、実際の年齢よりは若干年上に見られることが多かった。
女を落とすときはそのほうが都合がいいから、そのことは大いに利用していた気がする。
そんな些細なことで相手を騙して、気を乗らせるのが結構たのしかった。
「『JOJO』はどうだった?」
熱いコーヒーを飲みながら、マヒトが口を開いた。
「同じ。キョウとシオリがいた」
「相変わらずたまり場か」
「シオリがおまえを恋しがってたよ」
「それは光栄」
自分と同じようなセリフ。
それに小さな笑みを零して、燈路は窓の外の眺めた。
人の流れが激しい昼間の大通り。
いつもと変わらない風景が、ただつまらないと思うようになったのはいつからだったか。
夜の街は、自分と似た境遇の奴らが多かった。
事情はそれぞれだけど、それでも、みんな刺激を求めている。
快感と、快楽と、刺激。
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