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「戻ったのか?」
その言葉に、マヒトに視線を向けた。
小さく首を傾げると、マヒトはゆっくりと眼を細めた。
「むかしに、戻ったか?」
むかし・・・・あの頃のように。
ただ刺激を求めるだけの生活。
再び足を踏み入れたことで、身体中で、リアルに感じた。
「おまえは?」
「ん?」
「どうして、抜けた?」
マヒトと近くにいることが多かったおかげで、マヒトのことはキョウやシオリよりも知っていると思う。
それはマヒトにとっても同じことだろう。
あのとき、マヒトと自分は同じようなことを感じていた。
お互いの共通点を知っていたからこそ、自分たちは、刺激を求めていた。
マヒトは小さく笑って、口を開いた。
「時間が惜しくなった」
「え?」
あの場所にいるだけの時間が、惜しくなった。
そう言って、笑った。
「あそこにいる時間があるんなら、もっとアイツの側にいたいと思ったから」
そう微笑んだマヒトの表情は、見たことがないくらい穏やかな顔をしていた。
マヒトの言う「アイツ」が誰のことかはわからないけど。
それでも、マヒトはなにかを見つけた。
キョウの言うとおり、キッカケなんて、いろいろだ。
きっと、些細なことで、身体中で求めていた刺激への興味を失う。
それより、もっと、もっと、追いかけたいものがあるなら。
「俺はそれを知りたかったのかもな」
「え?」
「おまえが、なにを手に入れたのか、知りたかった」
にやりと笑うと、マヒトは一瞬眼を瞬かせ、苦笑を洩らした。
「俺らはどこか似ていたからな」
「そーゆーこと」
「おまえは、なにがほしい?」
そう問われて、僅かに首を傾げた。
冷たいアイスコーヒーを飲みながら、自分の手の平を見つめる。
なにかを見つけて、誇らしげに微笑むマヒトがうらやましいと思う。
自分も、この手で、なにかを掴みたいと思っているのかもしれない。
だから、なにかを求めてる。
そう、それは僅かに身体を震わせるもの。
「・・・・刺激、かな」
ポツリと呟いて、視線を上げた。
黙って自分を見つめるマヒトに眼を細めて、微笑む。
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