GAME

14/18
前へ
/18ページ
次へ
「興味を持っていたものが自分のもとから巣立っていったおかげで、少し退屈になった」 「なるほど」 「そこで、おまえを思い出したわけだ」 「俺は退屈しのぎか」 「お互い様だろ」  流行の音楽が流れる店内。  学生たちの笑い声が響く中で、コーヒーのカップを静かにテーブルに戻しながら、マヒトが口を開いた。 「・・・・なあ、トージ」  視線を上げると、僅かに顔を近づけてきたマヒトの口元がゆっくりと弧を描いた。  切れ長の眼が、自分を貫く。  懐かしい、挑発的な眼。 「ゲームの時間だ」 「え?」  おもわず眼を見開いた自分に、マヒトはにやりと笑って、手を差し出した。 「持ってるだろ?」  そう言われて、制服のポケットを探る。  チャリンと鈍い音をたてる銀色のコイン。  それをマヒトの手の平に乗せると、マヒトは懐かしそうにその感触をたのしんで、再び自分に顔を向けた。 「ルールは同じな。覚えてるだろ?」 「そりゃまあ。いったいなにする気だ?」 「刺激がほしいんだろ?」  その言葉に、おもわず眼を見開いた自分の眼の前で、マヒトがコインを指で弾いた。  むかしの記憶とリンクする、その仕草。  それだけで、少し、背筋が疼いた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加