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「興味を持っていたものが自分のもとから巣立っていったおかげで、少し退屈になった」
「なるほど」
「そこで、おまえを思い出したわけだ」
「俺は退屈しのぎか」
「お互い様だろ」
流行の音楽が流れる店内。
学生たちの笑い声が響く中で、コーヒーのカップを静かにテーブルに戻しながら、マヒトが口を開いた。
「・・・・なあ、トージ」
視線を上げると、僅かに顔を近づけてきたマヒトの口元がゆっくりと弧を描いた。
切れ長の眼が、自分を貫く。
懐かしい、挑発的な眼。
「ゲームの時間だ」
「え?」
おもわず眼を見開いた自分に、マヒトはにやりと笑って、手を差し出した。
「持ってるだろ?」
そう言われて、制服のポケットを探る。
チャリンと鈍い音をたてる銀色のコイン。
それをマヒトの手の平に乗せると、マヒトは懐かしそうにその感触をたのしんで、再び自分に顔を向けた。
「ルールは同じな。覚えてるだろ?」
「そりゃまあ。いったいなにする気だ?」
「刺激がほしいんだろ?」
その言葉に、おもわず眼を見開いた自分の眼の前で、マヒトがコインを指で弾いた。
むかしの記憶とリンクする、その仕草。
それだけで、少し、背筋が疼いた。
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