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 煙草を咥えながら、マヒトの端正な顔をぼんやりと思い浮かべた。  自分がこの場所に最後に訪れたのは半年くらい前だ。  そのくらいから、マヒトもこなくなったということだろう。  マヒトに会ったのも、そのときが最後だったはずだ。  よくつるんでいた仲間の中では、なぜかマヒトと一番気が合った。  いつも冷静で、その独特な雰囲気は周囲から一目置かれる存在だった。  夜の街の空気が、妙に似合う、そんな男。 「おまえもマヒトと同じかと思ったんだけどな」  そう言いながら、キョウは苦笑を洩らした。 「同じ?」  その言葉に小さく首を傾げると、キョウはなぜだか肩を竦めた。 「誰でもさ、いつかはこの場所を卒業するだろうからさ。 たとえば、やりたいことがあるとか、恋人ができたとか・・・・まあ、理由はいろいろあるけどな」 「・・・・」 「マヒトがどんな理由でこなくなったかなんて知らないけど、きっと、マヒトを動かすようななにかがあったんだろうと思う。 だから、正直、おまえもそうなのかと思ってた」 「なるほど」 「けど、おまえったら、ノコノコ舞い戻ってくるしよー」  そう言って、キョウは声を上げて笑った。  悪かったな、と苦笑しながら呟いて、短くなった煙草を灰皿に投げ入れる。  何気にジーンズのポケットに手を入れて、指先に当たる硬いモノに気づいた。  この場所にくるときには必ず持ってきていたモノ。  今日も無意識のうちにポケットに放り込んでいたらしい。  日本では価値のない、どこかの外国のコイン。  これを使うのは、マヒトといたとき限定だった。
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