25人が本棚に入れています
本棚に追加
保健室の隣は渡り廊下になっていて、その周辺は中庭になっている。
中庭といってもなにかがあるわけではなく、古ぼけたベンチが数個あるだけ。
天気のよい日にはそこでランチをとる生徒もいたりはするが、 渡り廊下を利用する生徒が少ないせいか、この場所は意外と知られていなく、カップルのデートスポットとなっているのが実情だ。
その中の一つのベンチに座っている人影を見つけ、燈路は眼を細めた。
並んでランチをしているらしい見覚えのある二つの顔を確認して、燈路は「ああ」と苦笑を洩らした。
「瀧川ね。よくきてたの?」
「まあな。といっても、アイツの場合はおまえと違って昼休み限定」
「へえ」
「女の相手が面倒とかふざけたこと抜かしてたけど、実際、妙に疲れた顔はしてたな」
「慣れないことしてたからだろ。いまじゃもう落ち着いたもんだ」
「ほお」
言葉を交わしながら、仲よくパンを齧る二人の姿を眺めながら、おもわず笑みを零した。
乏しい表情は相変わらずだけど、仁の前髪が少しだけ短くなったことが、なんとなく二人の距離がさらに縮まったように感じる。
「片割れも友だちか?」
「ああ、俺はアイツの子守役だったからね」
「だからしばらくは落ち着いてたってわけか」
おもわず眼を瞬かせると、浅井は何事もなかったかのように新しい煙草を咥えた。
その様子に苦笑を洩らしながら、燈路は再びソファーに腰を下ろした。
「なんだか最近退屈でねー」
「うらやましいセリフだな」
「しばらくはあいつらを見てるのがたのしかったけど、なるようになっちゃたら、俺の出番はもうないしね」
刺激がほしくなった。
そう呟いて、燈路はにやりと笑った。
こちらを見ていた浅井が、学校で働くには長めだと思われる髪をさらりとかきあげて、ゆっくりと白い煙を吐き出した。
最初のコメントを投稿しよう!