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 保健室の隣は渡り廊下になっていて、その周辺は中庭になっている。  中庭といってもなにかがあるわけではなく、古ぼけたベンチが数個あるだけ。  天気のよい日にはそこでランチをとる生徒もいたりはするが、 渡り廊下を利用する生徒が少ないせいか、この場所は意外と知られていなく、カップルのデートスポットとなっているのが実情だ。  その中の一つのベンチに座っている人影を見つけ、燈路は眼を細めた。  並んでランチをしているらしい見覚えのある二つの顔を確認して、燈路は「ああ」と苦笑を洩らした。 「瀧川ね。よくきてたの?」 「まあな。といっても、アイツの場合はおまえと違って昼休み限定」 「へえ」 「女の相手が面倒とかふざけたこと抜かしてたけど、実際、妙に疲れた顔はしてたな」 「慣れないことしてたからだろ。いまじゃもう落ち着いたもんだ」 「ほお」  言葉を交わしながら、仲よくパンを齧る二人の姿を眺めながら、おもわず笑みを零した。  乏しい表情は相変わらずだけど、仁の前髪が少しだけ短くなったことが、なんとなく二人の距離がさらに縮まったように感じる。 「片割れも友だちか?」 「ああ、俺はアイツの子守役だったからね」 「だからしばらくは落ち着いてたってわけか」  おもわず眼を瞬かせると、浅井は何事もなかったかのように新しい煙草を咥えた。  その様子に苦笑を洩らしながら、燈路は再びソファーに腰を下ろした。 「なんだか最近退屈でねー」 「うらやましいセリフだな」 「しばらくはあいつらを見てるのがたのしかったけど、なるようになっちゃたら、俺の出番はもうないしね」  刺激がほしくなった。  そう呟いて、燈路はにやりと笑った。  こちらを見ていた浅井が、学校で働くには長めだと思われる髪をさらりとかきあげて、ゆっくりと白い煙を吐き出した。
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