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部屋のベッドの上。
仰向けに寝転んで、ぼんやりと天井を眺めた。
興味を抱いたのは、瀧川の表情だった。
はじめて会ったときから、瀧川が仁に惚れていたのはわかっていたし、 仁がそれに気づいていないことにもわかっていた。
大人しくくっつけばいいものを、なにを思ったか、仁は瀧川から離れた。
瀧川が素直にそれを受け入れたとき、正直少し驚いたが、それでも、瀧川らしいと思って、自分はそのまま傍観者になった。
数ヶ月が経っても変わらない二人の関係。
それでも、確実に微妙な変化はあったと思う。
激しくなっていく瀧川の女関係と、それに伴って長くなっていく仁の前髪。
つぎに興味を抱いたのは、仁の表情だった。
長い髪の隙間から、仁はなにを見ているのだろう。
そう思ったら、二人の姿を、もう少し側で見ていたくなった。
二人の絡まらない視線が、自分の横で交差する。
その瞬間、自分は心の中で笑った。
傍観者に回ることで、手に取るように見えるお互いの本心。
張り詰めたように、微かに震える空気。
そんな緊張感が、正直、好きだった。
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