わからないじんげん

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 僕が彼女と付き合って二年目を順調に迎えた一方で、周囲のカップルは次々と破局していく。真ん丸いケーキと、小さくて何も入らないわりに高そうなバッグの写真をinstagramに載せて、「サプライズ超嬉しかった、一年目(ハート)」とコメントを添えていたカップルも最近別れたし、一見とてもお似合いに見えたカップルも、裏では彼氏が彼女に暴力を振るっていたというのを後から聞いて、人というのはよく分からないものだなあ、と思った。   「人って分からないもんだね」と彼女にLINEを送ると、「わからないじんげんだね」と返信がきた。「じんげん」とは、彼女が「人間」をもじって生み出した造語であり、特に意味はない。「つかれたじんげん」「ねむいねむいじんげん」のように、思い思いの言葉の後ろにくっつけて使う。「ねこじんげん」なんていう一見矛盾した言葉もあるけど、全く問題ない。彼女にかかれば、「人間」を含む深そうで複雑そうなあらゆる機構が無化される。僕は彼女の、そういう強引でお茶目なところが好きだ。  僕は彼女に、「そうだね」「寝るね」と続けて短い返信を送り、アラームをセットして、彼女からの「おやすみじんげん!」という通知がスマートフォンの画面に表示されたのを確認して眠る。
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